BLOG

DeNA

2024.03.01

障害予防の第1歩「全体像を捉える」

横浜DeNAベイスターズトレーナーの岡田匡史です。

前々回の記事では橋脇が高校野球やMLBにおける部位毎の障害発生率に関する文献を紹介させていただきました。

MLB投手では上肢における障害が約56%と半数以上を占め、MLB野手では腰部・体幹・下肢で約63%を占めています。

では、NPBでは障害発生率にどういった傾向があるのでしょうか?

どんなことでもそうですが、まずは「全体像を捉える」ことが重要だと考えています。

日本プロ野球トレーナー協会(JPBATS)では12球団統一のフォーマットで「疾患別統計表」というものを作成しています。

疾患別統計表には疾患名と月別の受傷者数が記録されており、下記のようなことを可視化することができます。

  1. 発生件数の多い障害部位はどこなのか?
  2. 怪我が起きやすい時期はいつなのか?
  3. 月毎にどういった疾患が多いのか?

実際に横浜DeNAベイスターズ(以下、YDB)の過去10年分疾患別統計表を元にデータをまとめてみました。

※キャンプ中は別メニュー、シーズン中は試合出場不可能のものを1件として集計しています。

YDBで多い障害部位はどこなのか?

まずは部位別の障害発生件数を調べてみました。

YDBにおける障害部位は上肢39.1%下肢37.2%体幹16.4%頭・頚部7.4%という結果でした。

最も割合の多い上肢では投手の肩関節・肘関節の慢性障害や野手の打撲などが多い傾向にありました。

怪我が起きやすい時期はいつなのか?

次に月別の障害発生件数を調べてみました。

YDBの月別障害発生件数では特に2月に障害が増える傾向にあることがわかります。

2月といえば春季キャンプですね。

2月であれば自主トレ期間から春季キャンプへの接続やワークロード管理、気候への適応が重要になってくるのではないでしょうか?

月毎にどういった疾患が多いのか?

今回は特に障害発生件数の多い2月(春季キャンプ)について掘り下げていきます。

2月の障害発生件数を部位別にみていくと、上肢では肘関節内側側副靭帯炎・損傷下肢体幹では肉離れが増加する傾向にあることがわかります。

ハムストリングス63%・下腿三頭筋21%・股関節内転筋7%・大腿四頭筋4%・殿筋群4%
内腹斜筋91%外腹斜筋9%

上記の疾患は受傷すると長期離脱につながる可能性が高く、予防することが重要となります。

例として、YDBのハイパフォーマンス部では肘関節内側側副靭帯炎・損傷の予防の一環で靱帯の評価に超音波画像診断装置(エコー)を使用しています。

仰臥位2ndポジションにて自重外反時とFPMs(回内屈筋群)収縮時を比較し、構造と機能を評価しています。

構造に問題があっても機能が維持できていれば症状が出ない場合もありますし、逆の場合もあります。

発生する障害の全体像を把握し、チームに与えるインパクトの大きいものから対策を練っていくことが重要ですね。

お付き合い頂きありがとうございました。

投稿者 : trainer

|

DeNA

2025.07.15

私がトレーナーを目指した理由②

横浜DeNAベイスターズS&Cの四角です。 早いもので、シー…

2025.07.10

最新の痛みの科学

はじめまして。横浜DeNAベイスターズに今年より入団した穐山大輝(あ…

2025.07.01

Blood Flow Restriction (血流制限)トレーニング

「現時点では、高負荷トレーニングで得られる筋力向上よりも(低負荷BF…

2025.06.28

野球と膝前十字靭帯損傷について

横浜DeNAベイスターズに今年より入団した佐藤正裕(さとうまさひろ)…