BLOG

DeNA

2024.07.05

『ノイズ』から障害予防を考える


横浜DeNAベイスターズで育成S&C投手担当をしております大宜見諒です。今回はパフォーマンスを発揮する際に考慮すべき『ノイズ』についてご紹介しようと思います。

伝統的な練習設計の原則

 これまで、選手のパフォーマンス向上のために行われるスキル練習の原則として「反復練習」が当たり前に行われてきました。反復練習により選手の動作の精度が上がり、不要な変動(ノイズ)減らすことができます。反復練習は、スキルの実行が

「反射的」「習慣的」「自動的」

に実施できるようになることを目指したものなのです。この考え方は、球場のロケーションやマウンドの傾斜角や硬さ、相手バッターが右打ちor左打ち、点差や投げる球種など、運動を行う環境条件が変わっても再現性のある動きで良いパフォーマンスを維持することを求めます。しかしこの考え方に疑問を呈した人がいます。

繰り返しのない繰り返し

 ロシア人生理学者のN・ベルンシュタインは、鍛冶屋(熟練者)のハンマーは毎回同じ場所を叩くが、同じ孤の描き方(ハンマーの振り方)をする訳ではない事を発見しました。これは、「繰り返しのない繰り返し」と呼ばれます。行動の『結果』は繰り返すが、生み出した『動き』を繰り返すことではその結果を得られない事を発見したのです。

 このことはスポーツの中で起こる動作にもいうことができます。良い選手ほど様々な動作パターンを持ち、その環境や制約の中で最適な動作戦略でパフォーマンスを発揮しようとします。パフォーマンスと環境の関係性は以前掲載したブログ記事【パフォーマンスについて】で紹介しています。

 障害予防の観点からも様々な動作パターンを持つことで、障害の起こりうるリスクとなり得る障害物から安全に回避したり、自身の体の状態に適応しながらパフォーマンスを発揮し続けることが可能になるかもしれません。巧みな動きにはバラツキ「ノイズ」が必要な側面(ex:ハンマーの振り方)と、バラツキが比較的小さいことが必要な側面(ex:毎回同じ場所を叩く)があるのです。

どうやってノイズを作るか?

 私が現場でノイズを生み出す際に負荷として考慮しているのは「環境」「外乱」です。

「環境」は快適環境でできる動作を、あえて環境を変えて実施することで負荷をかけます。この時変化させる環境要因は様々で、場所、地面の種類や状態、かかっている音楽、周囲の混み具合や観衆の有無など多岐に渡ります。この考えは以前掲載したブログ記事【『心地よくない』を選ぶ】でも紹介しています。

「外乱」は「繰り返しのない繰り返し」を引き出すために大変有効であると考えています。

 動画のエクササイズの目的は、ウォーターバック(水の入ったバック)を抱えて振り、片脚の安定性を高める事です。ウォーターバックを振ると、中に入っている水が不規則に揺れる事により外乱を受け、動作戦略が毎回変化します。見かけ上の動作は変化しなくとも(動画の私の身体は震えていて、見かけ上も変化してしまっていますが笑)、水の揺れるタイミングや方向が毎回変わるため、体が適応しようとするために用いる機能や動作のタイミングが毎回異なります。これが「ノイズ」として捉えられ、『繰り返しのない繰り返し』となります。

ぜひ皆さんも反復練習の中に「環境」「外乱」の制約を加えてみてください。

様々な動作戦略を習得し、怪我に強く良い結果を「繰り返し」得られる選手になれる一助となれば幸いです。

投稿者 : trainer

|

DeNA

2024.12.06

ARチームで行う障害予防

はじめまして。私は横浜DeNAベイスターズAR担当の世良田拓也と申し…

2024.12.04

秋季トレーニングインターンシップ⑤

【チームの活動について】  今回のインターンに参加させていただいて、…

2024.12.03

秋季トレーニングインターンシップ④

今回、秋季キャンプのインターンシップに4日間参加させていただき球団ト…

2024.11.29

秋季トレーニングインターンシップ③

ファームトレーナーの戸谷です。 今回もインターンとしてチームの一員と…