2024.09.27
横浜DeNAベイスターズ1軍のメディカルを担当しています河野祐吾と申します。
今回は、野球に限らず様々なスポーツの傷害でよくみられるハムストリングスの肉離れの再発予防について、横浜DeNAベイスターズで行っている取り組みをご紹介させていただきたいと思います。
ハムストリングスはスポーツの競技を問わず発生率の高いケガのひとつです。また、一度ケガをしてから、再受傷する確率の高いケガでもあります。初回の受傷から1年以内に再受傷する確率は30.6%で、さらにそのうちの約53%が競技復帰後25日以内に再々受傷をし、79%が前回受傷時と同じ筋肉の同じ部位を受傷するという報告もあります。
ハムストリングス肉離れの発生機序としては大きく分けて2つあり、全力疾走中や加速時等に発生するスプリントタイプと、外力が加わりハムストリングスが過度に伸長され受傷するストレッチタイプがあります。このうち、スプリントタイプの方が発生件数としては多いといわれており、横浜DeNAベイスターズで発生したハムストリングス肉離れもこのタイプでの受傷が多くなっています。
このように発生率・再発率の高いケガであるハムストリングス肉離れですが、「Nordic Hamstrings」に代表される伸長性収縮を伴うトレーニングが再発予防として有効であるといわれています。横浜DeNAベイスターズ でもハムストリングス肉離れを受傷した選手に対してこういった伸張性収縮を伴うトレーニングを処方して再発予防に取り組んでいますが、これと並行して、徒手による伸長性収縮を伴う抵抗運動エクササイズを実施しています。
エクササイズを運用する上での決まり事として、下記を設定しております。
①エクササイズは基本的にクール最終日のゲーム後に実施する(ビジターなど環境設定により実施困難な場合は別途検討)
②実施対象者は、直近でハムストリングス肉離れを受傷し復帰した健常選手及び同等のリスクがあるとATが判断した選手
エクササイズは主に3種類になります。
①膝関節90°屈曲位・股関節伸展エクササイズ
②膝関節伸展位・股関節伸展エクササイズ
③股関節伸展位・膝関節屈曲エクササイズ
このエクササイズを行うメリットとして、伸長性収縮の刺激を加えられる以外に、ATが徒手で実施することで股関節伸展筋力や膝関節屈曲筋力をモニタリングできるという事が挙げられます。特にクール最終日は選手の疲労度も高い事が多く、それに伴い既往のあるハムストリングスの筋力低下が起こっている事があります。徒手でのエクササイズを通して筋力低下を起こしている選手を早期に発見することで、その後の対応を次のクールから検討できる事も、再発予防の観点から有用であると考えております。
今回ご紹介させていただいた取り組みは、再発予防の取り組みのごく一部で、まだまだ多くの対策が必要であると考えております。ハムストリングス肉離れの再受傷のリスクは他にもたくさんの事が考えられますが、それらを一つずつ対策を立てて潰していく事で、障害予防の質の向上に繋がっていくと思います。
以上、ハムストリングス肉離れ再発予防の取り組みでした。