2025.10.01
リハビリ選手のRTPにおけるGPS活用について
横浜DeNAベイスターズでリハビリを担当しているトレーナーの 世良田拓也 です。
今回は、SCのトレーナーからもブログで説明がありましたが、私はチームで取り組んでいる リハビリ選手のReturn To Play(RTP) に向けたGPS活用の一部をご紹介したいと思います。
▶ GPS装置とは?
近年スポーツ現場で広がりを見せているGPS装置は、選手の動きを客観的に数値化することができます。
具体的には、
- Player Load(身体への総負荷)
- 走行距離
- 最大速度(Max velocity, km/h)
- スイング回数
- 加速・減速の回数
といったデータが取得可能です。
これらを活用することで、
といった場面で選手をサポートできるようになりました。
また「痛みがないから大丈夫」といった 主観的判断だけに頼らず、客観的データに基づく評価が加わることで、RTPの判断がより精密になります。
▶ GPSを使うメリット
1. リハビリ中の負荷管理
- 怪我直後は「低負荷・短距離」から開始
- 段階的に「高負荷ダッシュ・方向転換・ジャンプ・長距離走」へ移行
- GPSで数値を追跡することで、安全かつ計画的に負荷を上げられる
2. 客観的な復帰基準
- 「痛くない=復帰OK」は非常に危険
- Player Load、走行距離、Max velocityなどを怪我前と比較
- 怪我前の数値に戻り、さらに継続できるかどうか が重要な指標
3. 再受傷の防止
- 復帰直後は、無意識に怪我側をかばう傾向がある
- データを追跡し続けることで、左右差や過負荷を早期に把握し、再受傷リスクを下げられる
▶ 実際のRTPプロセス(例:ハムストリング肉離れ)
横浜DeNAベイスターズでは春季キャンプからGPSを導入し、リハビリ選手の動きをデータ管理してきました。
選手ごとに「RTP基準」を作成し、本人とも共有することでゴールを明確化しています。
Phase 1:回復期(Foundation)
Phase 2:強化期(Ability2~Phase 3:移行期(Ability & Technique)
- スプリント回数、急加速・減速回数を記録
- 段階的に負荷を増やし、疲労の蓄積を予防
Phase 4:実践期(Skill)
- 移動距離・速度を記録
- 試合と同じ移動パターンをGPSで再現できるかを確認
- 怪我前データと比較し、速度・移動距離等が同等なら復帰可能
Phase 5:追跡期(Follow up)
- 復帰後もGPSデータを追跡
- 継続的なコンディション管理と再受傷予防
▶ まとめ
GPSを活用することで、
- 「どれくらい動けているのか」 を客観的に可視化
- 「怪我前との比較」 による復帰基準の明確化
- 「復帰後の追跡」 による再受傷予防
が可能になります。
横浜DeNAベイスターズでは、このテクノロジーをリハビリ選手のRTP支援に積極的に取り入れています。今後も選手が安心してフィールドに戻れるよう、データと経験を融合させたサポートを続けていきます。