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DeNA

2024.01.25

障害予防とリスクファクター

横浜DeNAベイスターズトレーナーの橋脇です。

昨シーズンはチーフトレーナーがこのブログの更新を行っていましたが、今シーズンはハイパフォーマンス部に所属している全トレーナーが交代でブログを投稿します。

今シーズンも引き続きよろしくお願い致します。

さて、みなさんは野球ではどのような怪我がよく起こるとお考えでしょうか?

肩の関節唇損傷や腱板損傷、トミー・ジョン手術でよく知られている肘の内側側副靱帯断裂など肩・肘の怪我が多いと思われるかもしれません。

では実際に野球選手において肩・肘の怪我はどれくらいの割合で起こるかご存じでしょうか?

障害を予防するためにはどのような怪我が、どのような割合で、どのようにして起こるかを理解する必要があります。

Googleで「野球 スポーツ外傷発生率」で検索すると以下の文献が見つかりました。

高校野球のスポーツ外傷発生率に関する文献は見つかりましたが、プロ野球のものは見つかりませんでした。

次にPubMedで「MLB, injury rate」で検索すると以下の英語文献が見つかりました。

「コロナ禍での2020年シーズンにおけるメジャーリーグのスポーツ外傷発生率」

余談ですがPubMedCLOUDという英語文献を日本語で検索、日本語に翻訳できるサイトもあります。

世の中便利になったものですね(笑)

さて、この文献はコロナウィルスで開幕が遅れ、通常よりシーズンが短かった2020年のメジャーリーグにおいてコロナ前の2018年と2019年シーズンとのスポーツ外傷発生率を比較しています。

この文献の結論としては「2020年シーズンはコロナ前の2018年、2019年シーズンに比べて投手、野手ともに怪我が多かった」となっていますが、注目したいのはコロナ前の2018年と2019年の外傷発生率です。

投手では上肢56%、下肢22%、体幹・腰17%、その他5%

野手では上肢27%、下肢46%、体幹・腰17%、その他10%となっています。

予想通り投手は肩・肘など上肢の怪我の割合が多いですが、野手は上肢より下肢の怪我が多いことが分かります。

体の部位別でみると割合の高い順に体幹・腰17%、肩関節15%、肘・前腕14%、手・手首10%、ハムストリング9%、足部・足関節6%、膝6%…と続きます。

このデータをみると投手における肩・肘の予防も大切ですが、野手の下肢の怪我、また体幹・腰の怪我の予防も必要ということが分かります。

次に肩関節の慢性障害の発生要因(リスクファクター)について考えてみたいと思います。

以下の文献は「オーバーヘッドアスリートにおける肩関節慢性障害のリスクファクター」を調べています。

肩関節障害と関係の深い要因としては腱板筋力低下、ワークロード過多(投球過多・オーバートレーニング)、過去の肩関節の怪我(既往歴)があげられています。

また肩関節内旋可動域の減少は中程度の要因、肩甲骨機能不全については障害と関係があるかもしれないと結論付けられています。

このようにプロ野球で起こりやすい怪我とそのリスクファクターを理解することで、より効率的な障害予防が実現できると思います。

みなさんも実践してみてください。

投稿者 : trainer

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