
2024.04.29
こんにちは、横浜DeNAベイスターズの育成S&C野手担当 兼 アマスカウトの 藤尾佳史 です。今回は、S&Cの立場としてフォースプレート(床反力計)を活用した障害予防に関する取り組みを紹介したいと思います。
簡単に説明すると、高性能な体重計です。この上に乗ることで、動作を行う際に発生する地面反力(GRF)を計測することができます。
上の図は、フィジカル測定において最も需要の高いCMJ (カウンタームーブメントジャンプ)というテストを用いた波形です。結果は以下4つのフェーズに分けられます。
1⃣:静止している状態
2⃣:しゃがみ込みから跳び上がるまでの局面
3⃣:下肢三関節の伸展から跳躍中の局面
4⃣:着地の局面
障害予防の観点から、疲労度と負荷耐性をみています。
疲労度測定においては、CMJを用いた研究が多く、ラグビー界やバスケ界などで活用されています。しかし、野球界についての疲労度を測定する研究はほとんどありません。そのため、日々の測定から推測される結果をもとに選手のコンディショニング管理を行っています。CMJを用いた研究について、いくつかまとめてありますので参考にしてください。
CMJのジャンプ動作一つだけでも、約200項目の数値が算出されます。多くのデータの中からどれを選出するのかということについては、球団ごとに判断されています。下記6つの項目については、実際にチーム内で活用しているものの一部です。
これらのデータをDaily・Weekly・Monthlyにて算出し、前回の測定結果との比較や左右差の割合、Concentric/Eccentricの割合をモニタリングすることで、選手の特徴や変動を把握できるように取り組んでいます。
また、受傷した場合には、怪我をする前の情報を整理することでリスクファクターを炙り出す材料としての役割を果たすこともできます。
負荷耐性とは、身体にかかる負荷に対して、どれだけ耐えられるのかを把握するものです。負荷耐性に関する研究についてはこちらをご参照ください。
怪我の発生率が高まるのは『フィジカル以上のテクニカルな負荷がかかったとき』だと考えられています。選手一人一人が発揮するフォースやパワーのデータを把握し、個人の能力に応じたトレーニングを指導することで耐性を高めることができます。
トップスプリンターで例えると、走ること=テクニカルであり、この場合における「テクニカルな負荷」とは、1歩進むごとに体重の3倍以上の衝撃が生じていることを指します。これらは、野球の技術においても同様であり、投球動作や打撃動作中の地面を踏む瞬間や体幹が回旋するタイミングにあたります。
S&Cとしてトレーニングを教えることは重要であるため、フィジカルアップにばかり目が向きますが、それと同じくらい障害予防についても重きをおいた指導が大切です。
ベイスターズでは『世界最先端』を掲げた取り組みの一つとして、さまざまなテクノロジーを活用しています。
特に、昨年公表された、マウンドへのフォースプレート設置は、今まで見ていた動作分析を、より深く鮮明に解析できるようになりました。それにより、アプローチする内容にも変化が起こり、パフォーマンス向上へのつながりも深くなりました。
注意しなければいけないことは、パフォーマンス向上と障害予防は表裏一体であるということです。
我々はS&Cとして、サイエンスベースのトレーニングを一方的に指導するのではなく、選手のフィーリングや感性を大切にしながら、サポートすることを心がけています。